子供に越えられてはならない

キッズのためのメンタルトレーニング - 第98回
掲載日:2012年10月2日

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先日、大阪市で自宅に長男(3歳)と生後1ヶ月半の次男を残してパチンコ店に行き、約7時間にわたり放置して、次男を死なせたとして、無職の母親 (30 歳)を重過致死容疑で書類送検した事件がありました。自立していない乳幼児を放置する行動に「?」だと思いませんか?母親は長男が日常的に次男にいたずら をすることを認識しており「長男が次男を死なせるようないたずらをするとまでは予測できなかった」と供述しています。3歳の子供は、自立どころか無知で す。今から命とは何か?生きるとは何か?人間関係とは何か?社会とは何か?と教え、自立させていかなければならない時に。このような事件を見ると、事件を 起した親自身が自立していないことと無知さを感じます。

悲しいニュースから今回のコラムを書き出しましたが、保護者の皆様にお伝えしたいことがあります。
それは「子供に越えられてはならない」ということです。
私は毎週サッカー教室やサッカースクールに参加しキッズ~小学生を指導していますが、近年、「子供が大人の言うことを聞かない」「すぐに反論する(暴言を吐く)」「わがままで自己中心的な言動が多い」などといったことが目立ちます。

今の保護者の年齢は20代から30代と思いますが、皆様が幼少期を思い出してみて下さい。
「親(大人)は絶対」ではなかったでしょうか!?親は恐い存在ではなかったでしょうか!?
絶対という表現は不適切かと思いますが、大人(自分より歳をとった人)の言うことには耳を傾け、大人から言われたことは守る…。
このあたり前とされていたことが現代ではあたり前ではなくなっています。

原因の1つに「子供が簡単に親を越えてしまっている」ことだと私は思っています。
このコラムでも「親」について何度か紹介してきましたが、親という立場を「木の上に立って子供を見ている様子」と表してきましたが、そもそも「親」の漢字 の由来とは、親の左側は「薪」の原字で、木をナイフで切った生木を表したもの。それに「見」を加えた親という漢字は、ナイフで身を切るように身近に接して 見ていることで、じかに刺激を受けるような非常に近い間柄を意味しています。

子供は、親からの刺激を受けなくなった。又は子供が刺激だと思わなくなったことが、「子供に越えられてしまったこと」だと思います。
今、親になっている保護者の皆様は、自分が経験した幼少期の親子の関係から、絶対的な存在、恐い存在だった親から、仲の良い存在、好かれる存在でいたい親に変えているように感じます。
親子が仲良く、お互いに好きでいる(認め合う)関係は素敵で必要なことですが、優しさだけでは親子関係や人間形成は築けません。それは親の皆様が理解しているはずです。厳しさの中に優しさがあり、優しさの中に厳しさがあるのが育児ではないでしょうか。

私 はサッカー教室、サッカースクールなどで、子供が不適切な言動をした際には、怒る、意見を聞く、あえてほっとく、たわむれる、笑わせるなど色んな手法で 注意(指導)します。初めてお会いした子供にも指摘します。なぜ注意、指摘するかと言えば、「全ての子供は、間違いなく大人にはなる」からです。
立派な大人になってほしいじゃないですか。


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松山 周平(まつやま しゅうへい)
1976年3月21日、宮崎生まれ。
ロアッソ熊本 アカデミー部長
スポーツメンタルトレーナーとして熊本を中心に九州の中学・高校の部活動から大学、クラブの様々なスポーツ競技、種目のチーム及び選手達の心理面の強化・サポートを行う。

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