大人に求められる妄想力

キッズのためのメンタルトレーニング - 第97回
掲載日:2012年9月18日

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「週末から月曜にかけて熊本に「大型で非常に強い」台風16号が県内に再接近する」と気象庁は厳重な警戒を呼び かけま した。皆さん、今回の台風に対する備えは今までの台風と比べて変化はありましたか?私は変化がありましたよ。食べ物・飲み物を買いだめして、気付けばテレ ビやインターネットで天気予報をチェックしていました。

なぜ、私に変化があったと思いますか?
それは熊本、阿蘇を襲った大豪雨や東日本大震災の記憶です。
自然の力は予想もつかず、自然には勝てないことを無意識に学んでいたと思いますね。

東洋心理学で人が変わる「きっかけ」に「生死をさまよう・無一文になる・1人ぼっちになる」と3つの出来事があげられています。
この3つを経験した人は無条件に変わることができますが、好んで経験したくないことです。私は嫌です。メンタルトレーナーを目指している時、無一文に近い 状態を経験しましたから(笑)この変わるきっかけを引用するなら、私は自然災害で命をなくした人、生活が困難になった人を知り、また、ボランティア活動を 行ったことが変化の原因だと思います。

この考えに近いのは「妄想」や「迷妄」だと思います。(少し強引ですが)目の前に現れてもいないの に…ある意味で「勝手」に結果を決め付けてしまったり、 判断してしまうことで、良くも悪くも言動が制限されてしまう。または感情をコントロールすることができず、怒り・迷い・不安・悩みなどを引き起こしてしま う。こんな経験をした人は多いかと思います。

この2つのことは教育や子育てに使えることだと私は考えています。

子育てを行 うなかで様々な問題や事件が生じていますが、問題や事件は自分の子育てを振り返るきっかけになり、自分の子育ての軌道修正ができるのではないか と思います。しかし、親として指導者として指導や教育を変えること容易ではないと思います。それには、「妄想」「迷妄」が影響していると思います。
子どもの「今」だけや「今までの言動」から、私の子どもは「○○な性格だ」とか「将来、○○な大人になる」などと決め込む、また、自分と子どもとの関係性 から、私は「怒らないと、この子どもは理解していない」とか「子育ては難しい(苦手)」などと思い込み、結局…そう決め込み、思い込んでいるような子ども に育て、関係性しか築けなくてしまっているのではないでしょうか。

簡単に説明すると、妄想とは「根拠もなくあれこれと想像する」という、 迷妄は「道理がわからず、事実でないことを事実だと思い込む」という意味から理解で きると思います。根拠もない!事実ではない!マイナスなことを想像し思い込むことは、子どもと親、双方に悲劇しか生みません。

想像し思い込むなら、プラスなことに限ります。
心理的な安定を求めるなら…西洋心理学や東洋心理学では「良いイメージをして下さい」と教えています。心理的な安定の条件に「お金・成績」など外的要因の獲得とは教えていません。外的要因を求める人に限って心理的に不安定です。
根拠もないのに「子どもは良くなる」「できる力を持っている」と思い込みながら、指導や教育を行えば、思い込んだようなコミュニケーションをとることがで きると思います。そうなるように誘導できると思います。そうなるように接すると思います。そうなるようが続けば…思っていたことが現実になる可能性が高く なります。

より深く説明するなら、妄想や迷妄さえも考えないこと。決め付けや思い込みさえも自分の心から削除することです。
妄想、迷妄に良くも悪くも振り回されるなら、それすら考えないことですよ。
これは究極の心理状態ですが、妄想して苦しむなら妄想しないこと。

今回は難しい内容となりましたが、妄想や迷妄から私生活、人間関係、家族関係、恋愛、教育、指導に良くも悪くも影響を受け、様々な問題が生じているケースが多いので説明させて頂きました。


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松山 周平(まつやま しゅうへい)
1976年3月21日、宮崎生まれ。
ロアッソ熊本 アカデミー部長
スポーツメンタルトレーナーとして熊本を中心に九州の中学・高校の部活動から大学、クラブの様々なスポーツ競技、種目のチーム及び選手達の心理面の強化・サポートを行う。

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